ひふみよ 小沢健二コンサートツアー 二零一零年 五月 六月@中野サンプラザ

小沢くんのライブに行ってきました。胸がいっぱいというのはこういうことをいうのだと思いました。あまりの素晴らしい時間に、ライブが終わって誰ともうまく話せなかった。こうやって感想を書こうとしても、どうやって書いていいのかわからないんだけど、何も書かないのも勿体ないのでとりあえず書いてみます。これから行かれる方は極力何も情報を入れずに行かれるのをおすすめします!
ライブは隣も見えないような暗闇の中の「流れ星ビバップ」で始まった。途中で薄く照明があたり、小沢くんが朗読を始める。ニューヨークの停電の話。暗闇の中で聴く音楽の話。開演まで緊張でドキドキし過ぎて倒れそうな気持だったのが、すーっと落ち着いた。そのまま暗闇のまま演奏を終え、暗闇のまま「ぼくらが旅に出る理由」へ。そして、サビでようやく照明がついた時、バーっと気持ちがあふれ出して、嬉しくて嬉しくて涙が出た。
同年代の音楽好きがみんなそうであるように、小沢くんが大好きだった。ブギーバックのシングルを友達と2人で町の小さなCD屋に買いに行ったこと、カセットに落とした「天気読み」を何回も何回も聴いたこと、小沢くんが小山田くんと一緒に音楽をやってたことを知って震えたこと、ドゥワチャライクのためにオリーブを買ったこと、ダースをたくさん買って毎日食べたこと、友達とやたらと「オッケーよ!」て言いあったこと、カラオケで流れ星ビバップを1番早い速度にして歌ったこと、部活(吹奏楽部)の文化祭のコンサートのタイトルを無理矢理「ウキウキ'96*1」にしたこと、友達が音楽室でドアノックダンスを踊るのを笑いながら見てたこと、「恋しくて」のキムチラーメンの歌詞について討論したこと、desperationとescalationの意味を辞書で引いたこと。・・・くだらないことばかり思いだすけど、とにかくものすごく小沢くんが好きだった。それでもライブには行かなかった。武道館のライブのチラシを見て、お金がないからまた今度って思ったことを今でも覚えてる。いつか観れると思って諦めたのだ。それから小沢くんが活動しなくなって、「いつか」の危うさに気付いた時、ライブに行かなかったことを猛烈に後悔して、それから小沢くんを観ることはあたしの夢になった。
ライブはところどころに朗読を挟みながら、「麝香」(をやったのは個人的には意外だった)や全くの新曲やあの頃の曲をたくさんやった。ひふみよの話、お金持ちと貧乏の人の話、自転車の話・・・そういう朗読から、あの頃の曲につながるのが、すごく良かった。曲がアレンジされて(「天気読み」のアレンジ結構好きだった)、歌詞を変えていたりするのも良かった。きっと小沢くんは、10数年分の希望や期待を持ったあたしたちを納得させて、それで、自分自身もやりたいライブをやるんだろうなって思ってた。やるからにはそういうのが出来る自信があるんだろうなって。実際にライブを観たら、やっぱりそうだった。小沢健二だなぁと思った。当時と同じことをやっているわけじゃないし、このライブを具体的に想像できていた人はいないと思うけど、誰が観ても小沢健二だって感じたと思うんだ。小沢健二って本当にすごいよ!って10数年越しに思えるのって、なんかもうたまんない。尊敬と憧れ。全く裏切らないんだよなー。それでいて、小沢くん自身がライブを楽しんでいる感じがまた良かった。「それで感じたかった!僕らを待つ」と歌詞を変えてラブリーを歌ったけど、感じたかったのは本当に「僕ら」なのだと思った。
小沢くんが活動してた頃、あたしはいつか誰かと完全な恋におちる日を夢見るような高校生だった。そして今あたしは結婚もして現実を見つめる30歳。もうあの頃は果てしなく遠く感じる。でも、今日あたしは、あの頃の自分と手をつないでライブを観ているような気分になった。あの頃に戻ったんじゃなくて、一緒に観てるっていう感じ。2人で一緒にはしゃいで、小沢くん観れたね良かったねって言い合った気がした。本当に楽しかった。すごいライブだった。夢みたいだった。
実は今日のライブ最前列だった。観れれば席なんかどこでもいいと思っていたし、そもそも良い席のチケットが来るなんて思ってなかったので、チケット見た時はびっくりした。間近でみた小沢くんは、もちろんそれなりに年はとっていたけれど(それでも十分若い)、昔テレビや雑誌で見たのと同じ表情をしていて、それがとても嬉しかった。今回のライブのことを思い出そうとして記憶を反芻させると、小沢くんのさらさらとした髪の毛や、ものすごく細い手や体や、着ていたピンクのTシャツのことが真っ先に浮かんでしまう。そんな自分にあきれつつ、小沢くんが変わらず「王子様」だったということにも、さすがだなーなんて思うのです。神様、素敵な席をありがとう。

*1:「痛快ウキウキ通り」からとった・・・すごく恥ずかしいエピソードですね