1月26日、吉祥寺前進座でのアナログフィッシュの2008年最初のライブは「今年はいい年になるよ、new world is coming」という言葉から始まった。「Sayonara 90's」を演奏する前には「今年は希望の溢れた年になるといいね」と言ったし、ロビーには「Hope」と書かれた書き初めも貼られていた。その言葉たちはとても信頼できるものに聞こえて、きっとそうなるのだろうと無条件に思った。その頃、あたしにとってアナログフィッシュは完璧で、何も疑うところがなかったから。
去年の秋から冬のこと。まだ音源化されていなかった「Sayonara 90's」は、ライブで演奏される曲の中でもひときわ力を持っていた。90年代が好きだけど先に進むためにさよならをしなくちゃというこの曲は、90年代に音楽を聴き始めた自分にとってとても衝撃的だったし、そこから考えるべきことがたくさんあった。初めて披露された春から少しずつ形を変えて、色んな思いを含んで、どんどん曲が成長していくのも興味深かった。聴くたびに何かわかるような気がして、ライブの帰りの電車の中ではいつも曲を反芻して必死に思いを巡らせた。1回でも多く聴きたくて、1回でも多くライブに行った。アナログフィッシュを1番情熱的に好きだった時期だ。
ドラムの斉藤さんがアナログフィッシュを脱退したのは、その情熱の真っ只中、希望の溢れた年になると思ったライブのたった2ヶ月後のことだった。これからもアナログフィッシュが好きだという気持ちはあったけれど、2人になったアナログフィッシュをこれまでと同じ温度で観ることはできなかった。特に「Fish My Life」というずっと心待ちにしていたアルバムが出て、「Sayonara 90's」が音源化されてしまうと、何か完結してしまったような気持ちになった。サポートを入れてする彼らのライブは、良い時と悪い時とムラがあって、ずっと足踏みをしているみたいでもどかしかった。希望はちらちら揺れて見えて、本当にそこにあるのかわからなくなった。
正直、ごく最近までそういう風に思っていた。このままアナログフィッシュは止まったままで、あたしはいつかライブに行かなくなってしまうのかなとさえ思った。足踏みが前進に変わったと思ったのは、ここ最近1〜2回のライブでのことだ。足踏みは前進するのにちゃんと必要な過程だった。申し訳ないけど、具体的にあの曲のあそこが良いから前進した!とは言えなくて、単にずっとライブを見続けたあたしの感覚でしかないのだけど、確かにそうなのだ。前みたいにただただ信頼できるようになったというだけ。前みたいにただただアナログフィッシュがすごく好きだと思えるようになっただけ。でも、見えないけど確かなものってあるでしょう?
あたしは1月26日のライブの感想に、こういう事を書いている。

いい年になるよ、new world is comingて言ったけど、(アナログフィッシュが言う「希望」は)幸運みたいに自動的にはやってこないはずなんだ。(だけど幸運なんかより)きっともっと確かなものなのだと思う。

明日、アナログフィッシュCOUNTDOWN JAPANでライブをする。今年最後になるこのライブでアナログフィッシュは、2008年は希望に溢れた年だったと思わせてくれるはずなのだ。それをたくさんの人が観て感じてほしいと、心から思う。20時ちょうどからCOSMO STAGE。みんな観てねって、つまりこれが言いたかったんだ(笑)。でも、少し前だったら、きっとこういう風に自信を持って「観て」って書けなかったと思うから、どうしてもライブの前に書きたかったんだ。佐々木さんはブログで「今年やってきた事の一番いいとこが出せるようにガツカツやる」と書いている。あたしはそれを観るのが本当にとても楽しみ。